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十月
sora.jpg


夏は決まってまとまった休みを取り、遠出の旅行に出かけるからか。
暑さが遠のき、爽やかな風が吹き出す季節の頃は、部屋で過ごしたくなる。
十月の光は優しい。
焼けつくような日差し。剥き出しにしすぎた肩。蒸し暑かった花火大会。そんな夏の私を許すように、次の季節へと穏やかに連れ出してくれる。
柔らかく眩しい日光に、白く壁が輝いている。

厚口のマグに淹れたちょうどいい濃さのコーヒーは、少し温めだ。私はそれを時折口にしながら支度をする。手触りのよい白い綿のYシャツに袖を通し、肩につくほどの髪を緩くくくる。痛んでしまった毛先は、最近切ったばかりだ。クローゼットにかけてある服の中から、亜麻色のカーディガンを選び、鏡を前に私はそれを羽織る。
下ろしたての黒のストラップシューズを丁寧に履いて、鍵を持ち、玄関を出た。
たとえば山に登って紅葉を楽しむのでなく、秋はこの町を散歩するのが好きだ。

色づき始めた木々の葉を下から見上げる。
音楽はいらない。
耳を澄ませば、街路樹のプラタナスは、暖かな日差しの下で穏やかに呼吸をしている。
そして私もゆっくりと歩きながら、穏やかに呼吸し、秋の空気で肺を満たす。
土曜日の朝。
少しずつ暖色に町並みが染まっていくように、私は何かが始まりそうな、そんな素敵な予感がした。



 コーヒーと飾りのない服好きになる十月に少し美しくなる










<文章・写真:安藤ゆり  短歌:安藤えいみ>

今回は久しぶりに姉妹コラボです。
妹が少ししっとりとした世界観を書けるようになりました。




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[2011/11/25 22:42] | ショートストーリー | トラックバック(0) | コメント(4) | page top
なみだの海
ショートストーリー×短歌のコラボ人気に乗じて、わたしの妹、アンドウユウが、私の短歌に文章を付けてくれました。これから何作かコラボしていきます。妹共々よろしくお願いします。
みずいろ





「やっぱりさ、今日はやめといた方がいいんじゃない?」


 高速道路から降りてしばらくして、私は呟いた。
 水滴の付いた助手席の窓から外を見ると、風景全体が白くけぶっていた。正面を向けばフロントガラス越しに絶えず動いているワイパーが見えて、四車線の道路には次々と空から雨粒が落ちている。
「ちょっとぉ、今さら何を言ってんのさ」
「そうだよ、ここまで来て引き返したら意味ないでしょ」
 隣で運転をしている絵未と、後部座席に座っているゆっこが、私の言葉を受けてそう言った。私は「わかってるけどさ」と口を尖らせた。
 私たち三人は、朝から雨が降っているにもかかわらず海へ行こうとしていた。理由はいつか決めたルールの実行。「失恋したら皆で海へ行く」。ちなみに失恋第一号になったのはこの私だ。
 だいぶ前にこの三人で海へ行った時に約束したことだ。言い出しっぺは私。半分冗談で言ったつもりが、絵未とゆっこがはしゃいで同意した結果、私たち親友同士の新たなルールに加わった。その時私は「こういう約束って、言い出した本人が当事者になりそう」と笑って言ったのだが、見事に的中してしまったわけだ。


「にしてもさ、雨まったく止む気配ないね」
 後ろにいるゆっこが言った。
「天気予報じゃ、今日は一日中雨だからね」
 淡々と絵未が答える。私は何だかとことんついてない気がした。
「やっぱさ、雨の日に海に行くなんて無謀だよ。今日じゃなくたってよかったのに」
「いいじゃん、いいじゃん。面白いってきっと」
「春の海に注ぐ雨。ほら、ちょっとロマンチックじゃない?」
「えー、それ響きだけでしょ」
 実際は濡れるし冷たいし、ロマンチックどころじゃないはずだ。
「春の海って言えばさ、そんな日本の曲あったよね。渋いやつ、琴と尺八のさ」
 絵未が思い出すように言うと、ゆっこと二人して、「チャラララ」とか「ポゥオー」とか、お正月によく流れている曲を、下手くそな鼻歌で歌い出した。
 私はそれを聴いて笑いながら、でもどこかふっと、あまりに楽しげな空気に涙腺が緩んだ。どうもここのところナイーブになってるようだ。そう考えて、ちょっと明るくなっていた気分がまた落ち込む。
 けれど。
 私は視線を上向けて、落下してくる雨粒をたどり灰色の雲を見つめた。
「あっ、海!」
 突然ゆっこが叫んだ。その声につられ、私は窓の外を探す。雨のカーテンの向こうに、浅い青色に広がる海が見えた。
 海が見えた瞬間、絵未とゆっこのテンションはにわかに上がり出した。海水浴に来た子供みたいに歓声を上げている。太陽はないし海は濁ってて、とても海水浴日和じゃないが。思わず私は笑った。
 私は雨が降ってるのにもかかわらず、窓を開けた。雨が少し吹き込んでくる。けれど入り込む空気の中に潮の香りが混ざっていた。いや、それとももしかしたら雨が塩分を含んでいたりして。どっちか知らないが。


 なんだか、境界線が定まらない、雨が降り注ぐ海を見に行くのもいいかもしれない。
 三人で傘を差して。

  




親友の三人で決めたルール8 誰かの失恋の度に行く海






(text;アンドウユウ、tanka;安藤えいみ)

[2008/08/27 13:49] | ショートストーリー | トラックバック(0) | コメント(5) | page top
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